アニサキスとは
新鮮なお魚を食べて、幸せな気分……それを台無しにしてしまう、突然の激痛。大の大人でも七転八倒してしまう、そんな痛みをもたらすのがアニサキスという寄生虫です。
アニサキスはイルカやクジラなど、海で生活する哺乳類を最終宿主とする寄生虫です。アニサキスは、オキアミなどの小さな甲殻類の体内で成長しますが、オキアミを食べた魚やイカの内臓でさらに大きくなり、その魚やイカを最終宿主のイルカやクジラが食べます。最終的にはイルカやクジラの体内で卵を産む事で生活環が完結します。
アニサキス症は何故起こる?
ほとんどの寄生虫と同じく、本来の寄生主であるイルカやクジラの体内では、アニサキスは宿主に危害を加えるようなことはありません。しかし宿主ではない人間がアニサキスを生きたまま摂取してしまった場合に、胃や腸の壁を食い荒らし、強烈な痛みをもたらす「アニサキス症」を発症してしまうことがあるのです。アニサキス症は強い腹痛、嘔吐、場合によっては吐血を伴う場合もあります。
また食品衛生法における「食中毒」の扱いになるので、アニサキス症の疑いがある場合は24時間以内に最寄りの保健所に届け出なければなりません。
アニサキスの原因
日本でアニサキス症を引き起こす原因となる魚は、サケ、サバ、サンマ、タラ、イカなど海にいる魚介類です。これら魚介類を生、もしくは不十分な加熱や冷凍をした状態で食べることで、アニサキスに感染するリスクがあります。
日本には刺し身や寿司をはじめとした魚の生食文化があり、このために多くのアニサキス症患者を出しています。国立感染症研究所によれば、年間約7,000件のアニサキス症発症例があるそうです。これに対して、ヨーロッパやアメリカでは1960年からの40年間の合計で数百件程度だといいますから、日本ならではの寄生虫症だということが言えるでしょう。
近年日本では、魚介類を生きたまま輸送する技術が大幅に進歩しました。
アニサキス症患者は、これにともなって増加していると言われています。