アニサキス症には、寄生した部位によって「胃アニサキス症」「腸アニサキス症」「消化管外アニサキス症」があり、それぞれ症状が異なります。

アニサキスによるアレルギー

アニサキスによって引き起こされる症状は、アニサキスが直接胃や腸の内壁に侵入することで起きるものだけではありません。

アニサキスは、体内に入ることで強いアレルギー反応を引き起こす場合があります。

これが、アニサキス・アレルギーです。

アニサキスアレルギー

体をかゆがる男の子アニサキス症が知られる以前から、「青魚を食べるとじんましんが出る」と言われてきました。じんましんは典型的なアレルギー反応です。このじんましんは、「青魚の肉自体によるアレルギー」「古くなった魚肉に発生するヒスタミンに対するアレルギー」が原因である、とされてきました。しかしこの青魚に対するアレルギーは、ソバや卵などの他の食品アレルギーと違い、食べると必ず起きるというものではありません。実はアニサキス症も、「アニサキスが胃や腸の壁に侵入すれば必ず起きる」というものではないのです。むしろ、アニサキスが体内で死んだ後でも、強い腹痛や嘔吐などアニサキス症の症状、さらにじんましんなどが起きる場合もあります。




アニサキスが死んだ後も痛いアニサキス症

これはなぜかというと、生きたアニサキスが分泌・排泄した抗原が、アニサキスが噛み荒らした胃や腸の内壁から血液中に入り込むことが原因だとされています。
血中に入った抗原(特異IgE抗体)が皮下に分布している肥満細胞内の受容体と結びつくことで、肥満細胞からヒスタミンなどの物質が遊離されることで、じんましんなどのアレルギー症状を引き起こすと考えられています。
アニサキスが持っている抗原は高い耐熱性を持っています。

主婦つまり魚を加熱して食べることでアニサキス本体が死滅していても、アニサキスによるアレルギー症状を引き起こす可能性があるということになるのですが、しかし海外でのボランティアによる実験では、過去にアニサキスでアレルギー症状を引き起こした人にアニサキスの抗原を口から取り入れても、アレルギーの症状は起こりませんでした。これは先に触れたように、抗原が直接血液中に取り込まれる必要がある、つまり胃や腸の内壁に傷がついていることが条件になっている、と考えることができるでしょう。

 




つまりアニサキスは自分でアレルギーを引き起こす抗原をもっていながら、胃や腸の内壁を傷つけて血液中にその抗原を流し込むという働きをしているのです。アニサキス自身が意識してやっていることではもちろんありませんが、ずいぶんと迷惑なことですね。